私たちの生活する環境中には、さまざまな「エストロゲン様物質」があります。この 「エストロゲン様物質」とは、偶然その構造がエストロゲンに似ていることから、体内のエストロゲン受容体にエストロゲンだと認識されてエストロゲンと似た信号を出してしまうものです。
これらの物質は、大きく分けて二種類に分けることができます。
1)は、赤ワインや健康食品、漢方薬、さまざまな生薬に利用されている主成分、ポリフェノールという色素です。これは、植物エストロゲンと呼ばれ自然の植物に由来するもので、人類の歴史の中でうまくこれらの物質を利用し、現在では生薬、漢方薬などとして健康食品や化粧品原料として使用されています。
これらの植物の有用成分が持つ活性は、私たちの新しい分析法によって、調査し比較することが可能となりました。
2)は、主に石油由来のもので、これらの物質が放つニセの信号が、私たちの体に悪い影響を与えることから「内分泌撹乱物質」または「環境ホルモン」と呼ばれているものです。これまでは、正しく分析する方法がなかった為に、人体へ影響を及ぼす物質が未確認のままで使用されおり、大きな社会問題になりつつあります。これらの物質による影響として、性分化症、不妊症、脳機能障害、肥満、自己免疫疾患などがあると云われています。また、米国では妊娠初期3ヶ月の間に、この物質に女の子の胎児が暴露された場合、先天奇形や膣ガンなど、健康障害が発生するリスクが高まることが指摘されており、13人に1人の女性がこのような障害に悩まされています。米国政府は環境庁にその問題の改善を要求しています。欧州ではREACH(化学物質管理規則)などの規制を設定し、すでに「環境ホルモン」を規制しようという動きも激しくなってきています。
私たちの「エストロゲン様物質」の分析技術は、エストロゲン(E2, 17βーエストラジオール)と活性比較した場合の活性強度、および遺伝子群の変化による生理作用を、動物実験では計測できない極低濃度の領域で正確に計測することが可能となります。
このことからも、私たちの分析技術は、今後、世界の必要性を担う技術とも言えるでしょう。