先端遺伝子技術による有用植物の機能解析利用法
エストロゲン応答遺伝子による、ポリフェノール(植物エストロゲン)の分析技術
私たちの生活の中で、植物の特別な機能や性質を利用して作られている健康食品や化粧品は数多くあります。植物には色々な成分が含まれていますが、その中でも最も重要と言われている物は、ポリフェノールと云う赤ワインなどに多く含まれている色素と言われています。このポリフェノールは、その分子の中に複数のフェノール性水酸基(OH)を持つ植物成分の総称ですが、殆どの植物中にあり、自然界には約5、000種以上のポリフェノールがあると言われています。その化学構造が女性ホルモン(エストロゲン)ととても良く似ている為、細胞の中にある受容体(信号を受取るところ)が、このポリフェノール(植物エストロゲン)からの信号も同様に受信する事があります。この現象は加齢によって急激に分泌が減少するホルモンの代わりをしてくれるので、ホルモンの減少によって発症するさまざまな更年期障害の症状を緩和し、また、老化のスピードを遅らせます。
エストロゲンというホルモンの信号は、お母さんがお腹の中の赤ちゃんに送っている信号なので、男女を問わず、体の重要な部分の発達や再生に関係しています。
人類は長い歴史の中で、世界の様々な地域に育成する有効なポリフェノールを含んでいる植物を薬として利用してきました。ドラッグストア等で見かけられる商品は、製薬メーカが販売している合成薬以外の多くが、このような薬草由来の成分を健康食品や化粧品原料として利用しているものです。しかし、薬品と生薬(薬草)の間には大きな隔たりがありました。これまで生薬の原料となる薬草の機能を正しく測定する方法が無かった為、植物が持っている効果的な性質を正しく知り、利用する事が出来ませんでした。
しかし、私達は、わが国の最先端技術研究を行っている独立行政法人・産業技術総合研究所との共同研究により特許化した遺伝子技術を利用した分析法により、これまで小動物を利用して調査してきた分析法より1万倍以上の精度で、植物が持つポリフェノール(植物エストロゲン)の活性を正確に測定する方法を発見しました。そして、この技術開発によって、さまざまな有用植物の効果が測定出来るようになりました。世界各地に育成する独特の植物や言い伝えのある生薬、漢方薬、また、私達の大好きなコーヒーやチョコレート、その他の野菜等、そして、また植物原料の発酵による性質の変化などを正確に測定出来るようになり、多くの新しい可能性を作り出す事が出来るようになりました。その結果、これから更に求められる健康食品、アンチエイジング薬、女性の更年期障害薬、その他、骨粗しょう症や動脈硬化、不眠症、ホットフラッシュ等に効果のある化粧品や健康食品の開発が可能となります。また、これによって発見される物質は、経皮吸収と言う皮膚より体内に吸収する性質も持ち合わせている事から、骨粗しょう症や動脈硬化等に効果のある機能性化粧品と言うように、これまででは、余り考えられていなかったような商品を作る事が出来るようになります。
今後、この分析技術を利用した植物の調査研究は、新たな産業の製品開発を促す基本技術として利用され、さまざまな新しい機能性材料を使ったベンチャー産業等、新事業への展開が可能となり、これらの企業から新しい食品や機能性化粧品、機能性衣料品などが開発されると考えられます。また、これは国内だけでなく、世界のさまざまな気候・環境の異なった地域に育成する植物を利用した地域産業の牽引役となる新技術として大きく期待されます。